スチームトラップの「バイパス」は、トラップを通らずにドレン(蒸気が冷えてできた水)を流すための配管やしくみです。この記事では、設備担当者・施工業者の方向けに、バイパス配管とは何か、どんなときに使うか、配管での組み方、バイパスを内蔵した TLV BT3N とトラップ・止弁・バイパスの3役をまとめたベン ATB-5 の違いを、メーカーのカタログの記載をもとにまとめました。
この記事の要点
- バイパスは、トラップの点検・交換のときや、運転開始時に大量のドレン・ゴミ・スケールを流したいときに使います。ふだんは閉めておきます
- 組み方は3つ:①配管でバイパスを組む ②バイパス弁内蔵の TLV BT3N ③トラップ・止弁・バイパスを1台にまとめたベン ATB-5
- TLV BT3N の内蔵バイパス弁には止弁(ストップバルブ)の機能がないため、メーカーは入口・出口に止弁を設けることを勧めています
- ベン ATB-5 はハンドル1つで TRAP/STOP/BY-PASS を切り換えられ、カタログには「スペースの有効利用と設備費の削減に効果的」とあります
玉形弁(バイパス弁・止弁に):桑名金属工業 HM10KSG
マレブル 汎用10K ねじ込み形/サイズを選んで商品ページへ
HM10KSG-8A HM10KSG-10A HM10KSG-15A HM10KSG-20A HM10KSG-25A HM10KSG-32A HM10KSG-40A HM10KSG-50A
バイパス配管とは:役割と使う場面
バイパス配管とは、機器を迂回して流体を流すための配管です。スチームトラップの場合は、トラップと並行に配管と弁(バイパス弁)を設け、必要なときだけ開けてドレンをトラップを通さずに流します。バイパス弁を開けている間はドレンと一緒に蒸気も抜けるため、ふだんは閉めておき、必要なときだけ開けて使います。
メーカーのカタログには、次のような使い方が書かれています。
- 運転開始時のブロー:ベン ATB-5 は「最初の通気時は、ハンドルをBY-PASS(バイパス)位置にし、管内のゴミ、スケールなどをブローしてください。その後、TRAP位置に切換えて通常の運転を始めてください」
- 立ち上げ時の大量のドレン:TLV BT3N は「手動バイパス弁の操作によりスタートアップ時間の短縮、ストレーナー部のスケールを二次側へブロー可能」。用途は「立ち上げ時に大量のドレンが発生しやすい蒸気主管・一般装置・暖房・空調・タンクヒーティングなど」
- 点検・交換:トラップの前後に止弁を設けておくと、止弁を閉めてトラップを取り外せます(TLV は BT3N の入口・出口にストップバルブを設けることを勧めています)

①配管でバイパスを組む
既設のトラップにバイパスを付ける場合や、トラップの型式を選ばずにバイパスを設けたい場合は、配管で組みます。一般的には次の部品を使います。
| 部品 | 役割 | 当店の型式の例 |
|---|---|---|
| 止弁(トラップの前後) | トラップの点検・交換のときに流れを止める | 桑名金属工業 HM10KSG・M10KSG、KITZ A(玉形弁) |
| ストレーナ(トラップの入口側) | 配管内のゴミ・スケールを取り、トラップの詰まりを防ぐ | ヨシタケ SY-5(80メッシュ) |
| バイパス弁 | 必要なときだけ開けてドレンを流す。開け具合で流れを加減する | 桑名金属工業 HM10KSG・M10KSG、KITZ A(玉形弁) |
バイパス弁・止弁に玉形弁を使う理由
バイパス弁は開け具合で流れを加減することがあります。東洋バルヴのカタログには、ボールバルブは「構造上、絞り(スロットリング)には不向き。この場合にはできるだけグローブバルブ(玉形弁)を使用」と書かれ、桑名金属工業のカタログには、仕切弁は「全開又は全閉でご使用ください」とあります。また桑名金属工業のカタログでは、50A以下の内ねじ仕切弁を蒸気ラインで使うと「弁体スティック現象」を生じる場合があり、その場合は玉形弁を使うよう書かれています。蒸気のバイパスまわりには玉形弁が使いやすい、ということになります。
当店の玉形弁の最高許容圧力(カタログの値)は次のとおりです。
- 桑名金属工業 HM10KSG(汎用10Kタイプ・マレブル):-10〜120℃で1.4MPa、220℃で1.0MPa
- 桑名金属工業 M10KSG(10Kタイプ・マレブル):-10〜120℃で1.4MPa、220℃で1.2MPa、300℃で1.0MPa
- KITZ A(青銅):-29〜100℃の静流水0.98MPa、飽和蒸気0.78MPa
玉形弁の構造と選び方は玉形弁(グローブバルブ)の記事、マレブルバルブの型番・面間はマレブルバルブの記事で紹介しています。
②③バイパス付スチームトラップ(TLV BT3N・ベン ATB-5)の違い
バイパスの機能を本体に組み込んだスチームトラップもあります。当店で扱っている2型式をカタログの値で比べると、次のとおりです。
| 項目 | TLV BT3N-10 | ベン ATB5-G |
|---|---|---|
| トラップの方式 | フリーフロート式 | サーモエレメント式(サーモスタチック式) |
| バイパス | 手動バイパス弁を内蔵(蒸気専用の高シールボールバルブ、弁口径φ10mm)。ハンドルが配管と平行で開、直角で閉 | ハンドル位置で TRAP(トラップ)/STOP(ストップ)/BY-PASS(バイパス)を切り換え |
| 止弁の機能 | なし(入口・出口にストップバルブを設けることを推奨) | あり(STOP位置) |
| 使用圧力 | 〜1.0MPa(オリフィスNo.10) | 1.0MPa以下 |
| 使用温度 | 185℃ | 184℃以下(過熱蒸気には使用不可) |
| 背圧 | — | 一次側圧力の50%以下(最小差圧0.03MPa) |
| 呼び径・面間 | 15A・20A・25A。面間 約145mm(15A・20Aは同梱のブッシングを付けて約175mm) | 15A・20A・25A。面間130mm |
| 主な用途(カタログ) | 立ち上げ時に大量のドレンが発生しやすい蒸気主管・一般装置・暖房・空調・タンクヒーティング | 配管ライン・ヘッダなど(管末から大型の機器まで) |
| 商品ページ | BT3N-10-15A・BT3N-10-20A・BT3N-10-25A | ATB5-G-15A・ATB5-G-20A・ATB5-G-25A |
仕様・面間の詳細はTLV BT3N-10 の仕様・面間、ベン ATB5-G の仕様・面間の記事で確認できます。
どれを選ぶか
- 既設のトラップを生かしてバイパスを付けたい → ①配管で組む(止弁・ストレーナ・バイパス弁)
- 配管をコンパクトにまとめたい・部品点数を減らしたい → ③ベン ATB5-G(トラップ・止弁・バイパスの3機能を1台に集約。カタログには「スペースの有効利用と設備費の削減に効果的」とあります)
- 立ち上げ時のドレンが多い蒸気主管・装置で、トラップはフリーフロート式にしたい → ②TLV BT3N-10(入口・出口に止弁を付ける)
いずれの場合も、使用圧力・温度・背圧がトラップの仕様の範囲に入ることを確認してください。トラップの種類と選び方はスチームトラップとは|仕組みと種類の違い、用途と選び方で説明しています。
運転・保守のときの注意
- ベン ATB-5:ハンドルは出荷時の STOP(閉止)位置であることを確認して取り付け、最初の通気時は BY-PASS でブローしてから TRAP に切り換える。指示目盛りの中間位置での使用は避ける。凍結の恐れがある場合や長期間休止する場合は、運転停止後に滞留ドレンを排出する。メンテナンスは蒸気圧力がなく、表面温度が十分に下がっている(80℃以下)ことを確認してから行い、分解中はハンドル(コック)を回さない
- TLV BT3N:ハンドル・Uナットを取り外すと、グランド部のシール性が損なわれるため、取り外さない。内装のバイパス弁にはストップバルブの機能がないため、メンテナンスのために入口・出口に止弁を設ける
トラップが詰まったときの原因と対策はスチームトラップの詰まりの原因と対策、交換の手順はスチームトラップの交換方法と取り付け手順、メーカー別の面間はスチームトラップの面間一覧にまとめています。
よくある質問
Q. バイパス配管とは何ですか?
A. 機器を迂回して流体を流すための配管です。スチームトラップでは、トラップと並行に配管とバイパス弁を設け、点検・交換のときや運転開始時のブローのときに使います。
Q. スチームトラップのバイパスはなぜ必要なのですか?
A. 運転開始時に大量に出るドレンや配管内のゴミ・スケールを流したり、トラップを点検・交換したりするためです。ベン ATB-5 や TLV BT3N のカタログには、バイパスでブローする使い方が書かれています。
Q. バイパス弁は開けたままでよいですか?
A. 開けている間はドレンと一緒に蒸気も抜けるため、ふだんは閉めておきます。
Q. バイパス弁にはどのバルブを使いますか?
A. 開け具合で流れを加減することがあるため、玉形弁が使いやすいです。ボールバルブは絞りには不向き、仕切弁は全開・全閉で使うものとメーカーのカタログに書かれています。
Q. TLV BT3N とベン ATB-5 の違いは?
A. BT3N はフリーフロート式で手動バイパス弁を内蔵し、止弁の機能はありません。ATB-5 はサーモエレメント式で、ハンドルでトラップ・ストップ・バイパスを切り換えられます。
この記事で紹介した商品
- TLV BT3N-10(バイパスブロートラップ):BT3N-10-15A・BT3N-10-20A・BT3N-10-25A
- ベン ATB5-G(バイパス付スチームトラップ・三役):ATB5-G-15A・ATB5-G-20A・ATB5-G-25A
- 桑名金属工業 HM10KSG(玉形弁・汎用10K・ねじ込み形):HM10KSG-8A・HM10KSG-10A・HM10KSG-15A・HM10KSG-20A・HM10KSG-25A・HM10KSG-32A・HM10KSG-40A・HM10KSG-50A
- 桑名金属工業 M10KSG(玉形弁・10K・ねじ込み形):M10KSG-15A・M10KSG-20A・M10KSG-25A・M10KSG-32A・M10KSG-40A・M10KSG-50A
- KITZ A(青銅 玉形弁・ねじ込み形):A-8A・A-10A・A-15A・A-20A・A-25A・A-32A・A-40A・A-50A
- ヨシタケ SY-5(Y形ストレーナ・80メッシュ):SY-5-15A・SY-5-20A・SY-5-25A・SY-5-32A・SY-5-40A・SY-5-50A
スチームトラップの商品一覧もご覧ください。
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